自閉症の謎の拘りは突然に。。。
現在10歳の息子は重度知的障害を伴う自閉症です。
息子は幼少期からそれなりに『拘り』がありました。
- いつもと同じ道
- 行く場所
- 人
ただその拘りが長く続く訳ではなく、定期的に変わる。
一つ引っ込んだと思ったら、まだ他のものが出てくる。
そう、モグラ叩き状態。
そして最近
かなり困った拘りが発生してしまった。
それは
『食事を自分で食べられなくなる』
厳密には
『食事の食べ始めに箸を付けられない』
という拘り。。。
完全に食べないという訳ではなく、食べるときもあればフリーズが強すぎて食べない時もある。勢いに乗ると食べられることもある。
でも総評すると
『ほぼ自分で食べない』
摂食に関するこだわり・悩みは本当に切実です。
偏食はあるものの、食事・摂食についてはそこまで大きな問題はありませんでした。
しかし、このこだわりが出現してから
身体プロンプトと介助で1時間かかることも。
これが本当に大変( ̄◇ ̄;)
特に息子の場合身体も小さく痩せているので、また食べなければ痩せてしまう…などと考えてしまうと、私自信吐き気を感じることもありました。
そんなこんなで息子の摂食・食事のこだわりと現在進行形で向き合っている訳ですが
- これまでの経過と現状
- 取り組み①
- 専門家への相談
- 相談を受けてからの取り組み②
を記録として残していきたいと思います。
食事のこだわりと、もう一つの変化
ちょっと食事のこだわりの前に一つ。
そもそも昨年末あたりから自発的な要求や行動が減少し、指示待ち傾向がより強くなってきました。
PECSも自発的に要求を出すことが少なくなり、聞かれたら答える『応答』スタイルが増えて来ました。
去年の今頃はPECSによる表出コミュニケーションが劇的に伸び
パパが休日昼寝しているところに絵カードを持って行き
電車、バス、いきたい
と、伝えたり
時には朝起きて
お水、ちょうだい
と、自分の要求を伝えられるようになっていました。
このように視界にないものの要求(純粋なマンド)もたくさん出ていました。
この自発要求が減少していることと、今回の食事に関するこだわりも何か関係があるかもしれない…と思っていました。
これまでの経過と現状
話は『食事のこだわり』に戻ります。
食事の拘りが出始めたのが、今年の5月頃から。
1口食べてはハンモックに
1口食べてはビーズクッションに
という行動が見られました。
その度にダイニングテーブルまで身体プロンプトで戻して食べさせる。
を繰り返していました。
模倣で食べさせようとしても食べない。
いつものスケジュール(絵カード)も効果なし↓↓↓
『食事』→『次の行動』という見通しからの行動促進も無し。
食後のご褒美作戦にも全く動じない。
そして観察を続けていると
『食べ物を箸で摘む動作』が出来ずにフリーズしている。
この動作にこだわりと恐怖?のようなものがあるのではないかと推察。
食べたくない訳ではない、むしろ『食べたい』
『いただきます』をして箸を食べ物に付けずにフリーズ。プロンプトして1口食べるとまたフリーズ。
これを繰り返す。
『食べたくないんじゃないの??』
『美味しそうじゃないのでは??』
と言われたこともあるし、もちろん私もその可能性もゼロではないと思ったけど
プロンプトすると美味しそうに食べるのよ。
介助して食べさせると嬉しそうに食べるのよ。
食べること自体は嫌がっていない。
食べたくない訳ではない。
むしろ食べたいけど食べられない状態。
それなのに頑なに自分で箸を食べ物に持っていかない。
その動作を怖がっているようにも見える。
そのほんの一つの動作へのこだわりのように見える。
問題点のおさらい
この問題を『こだわり』から来るものとしてアプローチするために、確認しておくべき大事なことがありますね。
咀嚼や飲み込み、歯の異常はないか?
咀嚼や飲み込みには特にこれまでも問題はありませんでした。
- 一度に食べ物を詰め込みすぎる
- 噛み切れない
- 飲み込めない
ということはこれまでもなく、現状見ている限りもありません。
また歯についても毎月検診を受けており、虫歯もなく大きくグラグラしている歯もなく、口内炎などの炎症もありません。
元々食べることが大好きで、見た目で食べないという若干こだわりはあるものの、比較的色んなものを食べられます。
スルメや煮干しなどの固いものも食べられます。
体調に問題はないか?
そもそも体調に問題がないか??ということも確認しておく必要があります。
若干硬い便ではあるものの、排便もあります。
お腹も張りもなさそう。
熱などの体調不良の症状もなく元気です。
問題点の整理
上記の可能性を潰した上で、再度今回の問題点を整理してみます。
①食事中1口ごとに離席してハンモックやクッションに行ってしまう
②食事を自分で食べない(食べ始め箸を食べ物に持っていかない)
まず①の、離席することがパターン化してしまい食べない状況になっているのでは??
ということで、離席出来ない場所(横と後ろが壁、隣に誰か座る)という状況で試してみる。
すると、
離席しなくなった!!
離席しようとしてバーストすることも無かった!!
場所によって着席して食べることができるということは分かったので、改めて②の問題点へアプローチすることになります。
対策(取り組んでいること)
ひたすら身体プロンプト
食事に手を付けずにフリーズするので、声かけはせずに身体プロンプトにて箸を持たせて食べ物まで手を運ばせるようにしました。
そして少しずつその身体プロンプトを外していく作戦で
最後、横から肘をチョコんと押す程度のプロンプトで食べられるようになる。
しかし、このほんの少しのチョコんのプロンプトが一向に抜くことが出来ないのです。
やはり自分で食べ物を口に運ぶことを怖がっているように見える…
介助をすると嬉しそうに食べるので決して食べ物が嫌な訳ではない。
食事の状況をデータ化
前述した通り、声かけや模倣も無効。
頑なに自分から箸を食べ物に持っていこうとしない。
そんな状況が続き『なぜ?なぜ?』と首を傾げていても状況は一向に改善しないので、1ヶ月間データをとってみることに。
- 食事のメニュー
- 場所
- プロンプトの種類や回数
- 様子
- 好きなもの(以前好きだったもの)程フリーズする傾向が強い
- 学校ではあまり起こらない
- 麺類(好物)より米類の方が比較的箸が進む
パターン崩し
データ化する前から少しずつ試行をしていましたが
- 場所
- 人
- 食具
- 時間
などのパターンを変えてみたりしました。
パターンを崩すこと、変化を与えることで状況が好転することを期待しました。
具体的には
- 食事する場所を変える(席、部屋、正座するなど)
- 一緒に食べる人を変える
- いつもと違う食器や食具を使う
- 食事とお風呂の時間を変更するなど
専門家に相談
学校の先生やデイの支援者の方に相談しても、やはり事例が少ないタイプのようでヒントが得られることは難しかったので、専門家にも相談しました。
1人の専門家の方に頂いたアドバイスとしては、食事に問題に加えて自発要求が弱くなっているので、
新しい強化子探しをする
というご提案をいただきました。
- 食べるもの
- 余暇活動
- 音楽
- 感覚
- 環境
など、全てにおいて変化を与えること。
まさに、大きなパターン崩しですね。
これをしながら食事に関しても状況が好転するかどうか反応を見ていくということです。
そして、こだわりを自分の中で般化させてしまって、安心できる環境ほどこだわりを出してしまっている可能性もあると…。
Oh my god( ̄◇ ̄;)
食べたい意思を確実に確認する
さらに指示待ち受け身傾向が強いのでフリーズしているところに
ごちそうさま?
と聞いてしまうと、『ごちそうさま』という言葉に影響されて、本当にごちそうさまをしてしまう。
多分ごちそうさまをしなければいけないと思ってしまう…。
本当はどうなの??どっちなの??
ということで、主人が提案してきたことが
ホテルの朝食ブッフェに行くと食事を取りに行く時に席を離れるので
『食事中です』『食事が終わりました』って食事中カードがあるじゃん。食べ終わったら『食事が終わりました』にひっくり返す。
そんな感じでやってみたらどうかな。
おぉ、それは良いね!
意思を確実に確認できるね。
ということで、カードを裏返すよりも息子にはカードを選ぶ方が上手く出来そうな気がしたので
『食べます』『ごちそうさま』というカードを作成してテーブルに置いてみました。
すると、フリーズ時『どうする?』と聞くと
ちゃんと『食べます』と意思表示してくれました。
『ごちそうさま』をしたいときも、適切に選んでくれました。
絵カードの弁別も問題なし。
最初はアナログ(絵カード)で試してみて、その後自宅ではデジタルPECSで。
学校とデイには絵カードを作成してお渡ししています。
すると学校とデイでも活用して下さっていて、意思を確認するのにとても助かると喜んで頂けました。
パパ、good job!!!
という訳で、
やっぱり食べたい気持ちはある。
でもその一つの動作のこだわりが強くフリーズして食事が進まないのです。
自閉症のこだわりの難しさ複雑さ
出来ていたことが急に出来なくなる。
今まで出来ていたことが、ほんの少しのきっかけで崩れてしまう。
それが自閉症。
盤根錯節という言葉がふさわしい気がします。
まさに、物事が非常に複雑に入り組んでいて、解決が困難。
複雑オブ複雑すぎて、入り組んだ根や枝を切っても切っても原因が特定できず、そこの枝を切ってみたところで何の解決の糸口が見付からない。
しかも好きなものほど拒否をしてしまったり眩しくて目を逸らしてしまう不思議な現象もある。
推しが目の前にいると恥ずかしくて目を逸らしてしまうキャピキャピした感覚から、それが恐怖のようなものへと変わってしまうレベルのものまで。
謎のこだわりが出現するのです(本人にとっては急ではないかもしれない)
ちょっとした拘りから、このように生命維持に関わるような拘りまで。
拘りやルーティンという優しい言葉では言い表せないような気がします。
食、睡眠、排便という生きることに関わるこだわりが発生してしまうと本当に大変。
本人も辛いと思いますが、介助する方にもかなりのストレスがかかります。
なので今回の息子のこだわりについても、
自分で食べることを取り戻すプロンプトをしながら『食べる』ことを最優先にする。
どんな状況、場所でもとにかく食べさせる。
食べない時は介助する。
お互いストレスを抱えないようにすることを優先する。
(それでも食べないお子さんを知っているので、こんな安易に言えないのだけど)
生命維持というと極端かもしれないけど、食べないことには生きられない。
摂食の問題を抱えるご家庭は本当に辛いと思います。
なかなか理解されない自閉症
今回の食事のこだわりについても色々な人に相談しました。
でも誰も『分からない、なぜだろう』で謎で終わる。
色んな人に相談しても全く分からず見当も付かないような状態でした。
ただやはり一つの『こだわり』であろうと。
偏食、好き嫌い、食育、という問題ではない。
さらに、あるABAの専門家にこの摂食について相談したところ
お母さんが美味しそうに食べていたら子供も食べるんですよ、真似して食べるはずなんですよ
専門家の方にまでそう言われてしまい愕然としました。。。
自閉症支援してるんですよね??
そんなね、単純な問題ではありません。
そんなこと言ったら、私好き嫌いないし、大食いだし、趣味『食べる』って程、食べるの大好きだし。
それこそ『ほんといつも美味しそうに食べるよね!!』と言われてきた。
私をよく知っている人なら分かるはず!!
それでも、子供は食べない時は食べないんですよ。
『食育』では解決できないこともある。
それが自閉症だと思います。
とにかく脳が複雑すぎて、不安が強くて、寝たら忘れるような単純なものではない。
それでも、きっと複雑な困難さを抱えているのだろうということは、これまで育ててきて、一緒に生きてきて感じる。実際に行動に出ているのだから。
ただただ、ひたすら行動を記録して、試行を繰り返して、とにかく色んな人に相談するしかないと思っています。
一人だとどうしても視野が思考が偏っていってしまいますので。
またこうして記録して整理しながら、状況が好転していくように試行を繰り返していきたいと思います。
本日も最後までお読みいただいた方には心より感謝いたします。
ありがとうございました。